アイキ工業株式会社


美粧段ボールシートの反り対策

はじめに

 段ボールの反りは、段ボール工場の製造工程での生産性を阻害する要因で、最も解決が困難とされるテーマです。段ボールメーカー、機械メーカーがそれぞれ、これらの解決の糸口を探るべく、日夜大きな努力を払っています。
 主原料である段ボール原紙については、製紙技術の発展により品質の向上がなされていますが、反面、原紙の薄物化、低グレード化、坪量の多様化で、原紙の組合せによって段ボール製造時に反りが増えているのが現状です。当社は、諸条件の変化で発生する反りの改善を目的として、モイスナーによる反り矯正の研究を重ねてまいりました。
 今回のテーマである美粧段ボールシートは、生活者包装に使われる場合が多く、箱のサイズも小さく、使用する原紙の種類が多く、しかもJIS規格がありません。個装用段ボールで使用するパルプも古紙がほとんどです。箱の形状も単純で構造的にも強固でない形式が多用されておりますが、反面印刷適性は最も重要視され、また反り防止についても厳しく要求されます。
 多様化する美粧ケースの中に合紙が多種多様あり、かつ性質の異なる種類の原紙(又は材料)を貼合(接着)させるため、片面段ボールの裏ライナと段山に適当な水分が要求されています。水スプレーでは困難でしたが、近年当社のモイスナーを使用して反り改善に大きな効果が発揮されることが実証されました。そこで事例を紹介しながら反り発生のメカニズム、紙の特性、蒸気(モイスナー)の持つ不思議さなどを述べてみたいと思います。

反りの定義

段ボールの反りとは、一般に表・裏ライナの水分差や温度差などにより生ずる段ボールシートの変形状態をいいます。

実 験

幅方向と流れ方向のそれぞれに上反り、下反り、S字反りがあり、合成されれば複雑な『ひねり反り』となります。


名刺を手の平に乗せます。 15〜20秒で「上反り」となります。 上反った名刺を裏にします。
30〜40秒でまた「上反り」となります。
今度は名刺の裏側からライターにより加熱してみると「ひねり反り」となります。

※手の平をタオルなどで少し濡らすと、短時間で大きく上反りします。

模式図

木材パルプを原料とした原紙は吸湿により伸び、放湿(乾燥)によって縮む性質があります。



(5)フラットなライナの断面拡大図



(6)ライナの下側より蒸気または水分を与えると(2)同様に「上反り」となります。これはライナの中の繊維が水分によって伸びるからです。


(7)反対に下部より加熱すると繊維が乾燥して、収縮するので「下反り」の現象となります。

ライナはその組成のひとつである繊維に方向性があります。流れ方向の伸縮は影響が少ないですが、幅方向、ライナに水分を与えると0.9%伸び、それを加熱させると、逆に2%縮みます。ライナに水分を与えないで加熱すると、0.7%しか縮みません。実に3倍も縮むことが証明されています。(弊社の実験による数字)。この収縮が反りを発生する要因です。(大気の湿度が高い場合は、出来上がったシートが吸湿により伸びが発生して結果的に反りが発生する。)

水スプレーとモイスナーの違い ・・・・・・ モイスナーは吸湿が早い
水スプレー

WFには効果的です。AF、BF、EFには水とエアー混合(2流体ノズル)タイプが望ましいです。EF、マイクロFは雰囲気。環境により異なりますが、経時変化が発生し易いです。
(内装段ボールの場合、水スプレーの水あとが発生し易いです。)またプレプリントの反り矯正には、部分的に水分を与える水スプレーは最適です。

モイスナー

WFには、モイスナーの他に加速スチーマーとの相乗効果でスピードアップと同時に下反りが解消します。(単独では不適)片段シートをモイスナーで伸ばして熱盤にいれることが重要なポイントです。水分が少ないので、モイスナーによる経時変化はありません。


  WF AF BF EF マイクロF
水スプレー 水のみ × ×
水とエアー混合 ×
モイスナー

(上記の表は、弊社の実績に基づいた判定です)

表・裏ライナの水分差・温度差が起こる原因
コルゲーター

■ ブリッジ上(湿度の違いによって水分差が発生する。)
夏場は湿度が高い冬場は湿度が低い

S/F(瞬間加圧接着方式) D/F(間接圧着方式) 製造工程から起こるもの。
D/Fは、熱盤からの一方的な加熱により、表・裏ライナの温度差が大きいため、反りに与える影響は大きくなります。
加速スチーマーを使用して熱盤温度を低くすれば反りは小さくなります。(低温貼合)

■ 貼合速度の変化
高速運転になるほど、表・裏ライナの温度差が大きくなり、下反り傾向となります。
(最近のコルゲーターは片段シートの裏ライナを大きなプレヒーターで加熱しています。)

■ 糊付着量の変化
S/F側の糊量を多くすると、裏ライナ側の水分が増すので下反り効果がありますが、ウオッシュボートが発生し易しくなります。
D/F側の糊量を多くすると、表ライナ側の水分が増すので、益々下反りとなります。

■ 一般的な下反り対策として、片段シートの裏ライナ側へ水分を与えます。

不思議な蒸気温度いろいろ
   
市販の圧力釜。圧力と温度を測定するためゲージと
温度センサーを上蓋に取り付けました。

やかんの内部は1気圧100℃。
蒸気吹き出し口では99℃。
  出口より約10cm離れた位置では68℃。   加熱してみると
ゲージ圧0.6kg/cm
113℃で沸騰します。
  出口より約10cm離すと72℃。
     
加速スチーマーから出た直後の温度は128℃。(片段の温度が128℃あるというのではなく、雰囲気温度です)(A)   加速スチーマーの使用状況。   入口付近の温度は63℃。(B)    
         
ドレンの多い高圧蒸気配管より漏れている状態。
出口より約10cm離れた位置でも76℃と高い。
  ドレンの少ない高圧蒸気配管より漏れている状態。出口付近の温度は50℃と低い。出口から10cm離すと33℃です。        

加 熱 蒸 気

加熱モイスナー構造図

加熱モイスナー(加速スチーマー)

加熱モイスナーは内部に1次側蒸気の高圧ボックスがあり、その中央部に細いノズルがあります。加湿蒸気はここを通過する際に加熱されます。表面のアルミ板より吹き出る時の温度は、120℃〜130℃あります。


加 湿 蒸 気

加湿モイスナー構造図

加湿モイスナー

加湿モイスナーは下のパイプより入り、中央部の冷却板を通過して、幅方向に対して均等になる様にしてあります。表面のアルミ板には、約1000個の孔があり、そこから蒸気がでます。


 蒸気の性質=圧力釜などは内部が密閉状態になるよう設計されているため、加熱すると蒸気が釜の中に閉じ込められて圧力が高くなります。それにともなって沸騰点も上昇します。(例えば1.5kg/cm2で125℃)沸騰点の状態にある蒸気を「湿り蒸気」といい、水がすべて蒸気化した時の蒸気は「乾き飽和蒸気」(段ボール業界で一般的に使用されている飽和蒸気)と言います。そして更に加熱すると沸騰点より高い過熱蒸気になり、加速スチーマーもこれに属します。一方、段ロール内で蒸気は蒸気熱(潜熱)を放出して飽和水(ドレンを含んだ蒸気)に変化します。
 反り矯正モイスナーには低圧(0.5kg/cm2)のドレンを含んだ湿り蒸気が効果的です。

設置例
裏ライナ、段山用モイスナー写真

裏ライナ、段山用モイスナー

表ライナ


美粧段ボール製造用コルゲートマシン構造図制御盤写真
まとめ

 最善の運転方法として、次の4点が指摘できます。

■ ブリッジ上に溜めを出来るだけ少なくします。

■ プレヒーターの巻き付量は運転スピードと同調(3段階でも良い)させます。

■ コルゲータの運転速度がアップ・ダウンした時、段ボールシートに与える熱量も同調したマシン機構が必要です。

■ D/Fの熱盤は段頂に塗布された生糊を「ゲル化※」させ、それを乾燥させる役目です。加速スチーマー装置を使用すれば、すべてフルート(WF.AF.BF.EF.マイクロF)は、低温での接着が可能となり、反りにも優しいです。

生卵とゆで卵の図

ゲル化とは、糊化とも云い、水に溶かした澱粉を加熱して、ゼリー状に固化した状態です。これは「生卵」を加熱すると「ゆで卵」となる状態と似た現象です。但し、澱粉のりは水が不足すると、いくら加熱しても十分にゲル化しません。貼合は初期接着が一番の重要なポイントです。加速スチーマーはこの点充分にゲル化させる役目をもっております。